日本の酒造りに携わってきたのは、沖縄県をのぞいては、男子が中心だったようです。戦前までは酒造りはたいていは女人禁制だったそうです。その男子たちを統率する責任者は、杜氏(とうじ)と呼ばれていました。「杜氏」とは、家の女主人という意味の「刀自(とじ)」という言葉からきたとする説が有力です。古い時代には酒造りは女性の仕事だったために今でもそう呼ぶのだとか。沖縄ではずっと女性が携わってきたのは、古代のものがそのまま伝わったからだろうとか、そんな話。
しかしどうなんでしょう?
女性だけの仕事だったものが、ある時代にそっくり男性だけの仕事に変ってしまうことが本当にありうるのでしょうか?
沖縄で女性がお酒を作ってきたのは、やはりお酒が神事と関係するものだからで、沖縄ではノロと呼ばれる女性たちが神事の中心をなしていたことと無関係ではないのでしょう。ところが、このノロという神女の組織は、14〜15世紀ごろに成立した琉球王朝によって上から組織化されたものだという指摘が最近なされているようなのです。沖縄の神女の組織が古代のままのものではないということになれば、酒造りについても同様なことになります。(男子のノロもごく少数ですが戦後も確認されています)
杜氏の祖神をまつった神社が、奈良県桜井市の大神神社(おおみわじんじゃ)の境内にあり、活日神社(いくひじんじゃ)といいます。活日とは人の名前で、『日本書紀』によると、十代崇神天皇の時代に大神神社の神に捧げる酒を造った人です。この活日という人の性別はわかりません。ネット検索をしたら女性のように書いている人がいましたが、根拠を明らかにしていませんから先入観によるものと思われます。
男子による酒造りの話に戻りますが、男子だけの集団の中に一人だけトウジという女性を意味する呼び方で呼ばれる人がいるというはっきりした事実があります。男子だけの集団には、古代からそういうことは多いと思います。
女子だけだったのが男子だけに移行する過渡期に一人の女子が残ったためとかいうのはありえないことでしょう。限られた空間での共同生活で、しかもその一人は神事の中心になって聖なるものが要求されるわけですから、そういう男女構成の集団はありえません。古代のギリシャ周辺地方のように男子を去勢してしまえば話は別ですが。
古事記のサイトを検索してみたら、女性でお酒を醸造したのは神功皇后。それからアシナヅチ、テナヅチという夫婦が作っています。他のいくつかの例では性別はわかりません。神功皇后は女性ですが、男装する人でもあるのです。
そしてまた「男子だけの集団の中に一人だけ女性を意味する呼び方で呼ばれる人がいる」というところに話を戻したいのですが、つまりこの一人とは、「論理的には」女装といえるはずなのです。証拠はまだ見つかりませんけど。
※ 古代では生まれが男でも女でもお酒を造り、服装は神事風だったと想像できます。
古代のお酒は一夜酒など短期間で作ったらしいのですが、一ヶ月以上かけて作るものが好まれるような時代になってから、女性は生理のために関われなくなったのかも。
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