比叡山の若き僧・桂海律師が、近江国の石山寺の観音のもとで修行中に、七日目に夢に美しい稚児を見て以来、煩悩にとりつかれてしまいます。
 それではいけないと再び石山寺に詣でる途中、三井寺の前で中を垣間見ると、桜の木の下に、夢で見たあの美しい稚児がいるではありませんか。いよいよ思いは募るばかり、翌朝早くに寺へ行くと、中から童が現われたので、尋ねてみると、稚児は梅若と呼ばれる高貴な生まれの人とわかり、ますます修行どころではなくなって、比叡山に引き返してしまいました。
 桂海は、何日も悩んだ末に思いを打ち明けようと、再び三井寺に出向いて、童に一首の和歌を託します。それに対する梅若の返事の歌は、そんなに簡単にOKというわけにはいきませんというものでしたが、桂海は返事がもらえたことだけで満足して山へ帰ろうとします。けれども途中で引き返してみたりで迷っていると、そこへ馬に乗った童が現われ、梅若の本当の気持ちの歌を伝えて、桂海を引き留めたのです。桂海は三井寺の内に宿舎を借り、人目を避けながら機会をさぐって、十日余りすると桂海の宿に梅若が現われ、二人は枕をかわすことになったわけです。

 ----梅若から最初にもらった歌は、OKの返事ではありませんが、含みのないものではありませんし、すぐに引き下がることもないとは思うのですが、そこはやはり修行の身だからなのでしょう。もし童が引き留めに来なかったら、そのまま諸国を流浪するしかなかったような桂海さんでした。
 梅若の見かけは女性そのものであるとはいえ、交互に歌をやりとりする男女の対等な関係とはやはり違うわけなのでしょう。その夜には梅若のほうから、男の部屋に出向いてくるわけです。二人は「行く末までの互の心を深く誓い合った」のですが、けれど一夜の契りで桂海は山へ帰ります。
 梅若の態度は処女のようにも見えるのですが、こういうことは何度もあるのかどうか、でもそれは愚問というもので、稚児は常に聖なるものであって、物語の本筋からずれないようにしましょう。
秋夜長物語その3
秋夜長物語その1

テーマ : 本の紹介 - ジャンル : 学問・文化・芸術

Comment

Comment Form

(変更可)
管理者にだけ表示を許可する

Trackback